品質管理とデータ分析
パレート図とは?故障の多い原因を見つける棒グラフと累積比率の読み方
会社のシステムで毎月たくさんの障害が発生するとき、どの問題から改善すればよいのでしょうか。「原因ごとの発生件数」が分かっているなら、まずパレート図を使うと優先順位を考えやすくなります。
ポイント:パレート図は「大きい順の棒グラフ」+「累積割合の折れ線」
棒を見ると件数の多い要因が分かり、線を見ると上位の要因だけで全体の何割になるかが分かります。ただし、件数の多い要因が必ずしも根本原因であるとは限りません。
1. 身近な例:会社のヘルプデスクに100件の問い合わせが来た
「ログインできない」「社内アプリが動かない」などの問い合わせを、調査して分かった発生要因ごとに分類したとします。1か月で100件あった場合の仮の集計がこちらです。
| 発生要因 | 件数 | 累積件数 | 累積割合 |
|---|---|---|---|
| 設定ミス | 40 | 40 | 40% |
| 操作ミス | 30 | 70 | 70% |
| 機器故障 | 15 | 85 | 85% |
| 回線障害 | 10 | 95 | 95% |
| その他 | 5 | 100 | 100% |
「設定ミス」と「操作ミス」の合計は70件。つまり、最初の2項目で全体の70%を占めます。これを見れば、設定手順の標準化や、操作画面の改善から調査する価値が高そうだと考えられます。
ただし、頻度だけで対応順を確定させるのは危険です。少数でも情報漏えいや長時間停止につながる障害は、影響の大きさから先に対策すべき場合があります。
2. パレート図の構造を図で見る
架空の障害100件の例。左軸が件数、右軸が累積割合です。
なぜ棒は左から多い順なのか
普通の棒グラフは曜日や部署の順に並ぶこともありますが、パレート図では原則として件数や金額の大きい項目から並べます。左側に重要度の高そうな要因が集まるため、最初に着目する部分が分かりやすくなります。なお「その他」は、比較しやすくするため末尾に配置されることがあります。
折れ線の「累積割合」とは
各項目の割合を左から足した値です。例えば「設定ミス40件」だけなら40%。「操作ミス30件」も合わせると70%。全項目まで足せば100%になります。
3. 実際にはどんな順序で作る?
- 何を減らしたいか決める(障害件数、クレーム件数、損失金額など)。
- データの収集期間と分類ルールを決め、項目別の件数を集計する。
- 原則として件数の多い順に並べる。
- 合計件数、累積件数、累積割合を計算する。
- 棒グラフと累積割合の折れ線を重ねて描く。
- 上位項目を優先的に調査し、対策後に再集計する。
同じ事象を二重計上していないか、分類不能なデータが「その他」に偏っていないかも確認してください。分類が不正確だと、見た目が整ったパレート図でも判断を誤ります。
4. パレート図と似た分析図の使い分け
| 図法 | 得意なこと | 使いたい場面 |
|---|---|---|
| パレート図 | 件数などの多い項目を順位付けする | どの障害要因が多い? |
| 特性要因図(魚の骨図) | 結果に影響する要因を体系的に洗い出す | なぜ設定ミスが起きる? |
| マトリックス図 | 2組以上の項目の対応関係を整理する | 部署と対策の担当関係は? |
| 連関図 | 複雑に絡む原因・結果の関係を整理する | 教育不足と手順不備はどう影響し合う? |
パレート図を作っただけでは「設定ミスの根本原因」は確定しません。パレート図で優先項目を選び、特性要因図で原因を洗い出し、対策の効果を再びパレート図で測るという組み合わせが実用的です。
5. 操作ラボ:自分でパレート図を作ってみよう
架空のITヘルプデスクで発生件数を自由に変更できます。棒の順番、累積割合、80%ライン、上位の項目がどう変わるかを確かめてください。棒を単純に大きくするだけでなく、どの要因が改善の優先候補になるかを考える練習ができます。
INTERACTIVE LAB
障害の件数からパレート図を作る
各項目の件数をスライダーで変更すると、グラフを件数順に並べ直し、累積割合を再計算します。すべて学習用の架空データです。
要因別の発生件数
総件数:100件
上位3項目で全体の80%以上に達します(設定ミス・操作ミス・機器故障)。
| 要因(件数順) | 件数 | 累積件数 | 累積割合 |
|---|---|---|---|
| 設定ミス | 40 | 40 | 40.0% |
| 操作ミス | 30 | 70 | 70.0% |
| 機器故障 | 15 | 85 | 85.0% |
| 回線障害 | 10 | 95 | 95.0% |
| その他 | 5 | 100 | 100.0% |
選択中:設定ミス
発生件数 40 件。全体の 40.0% を占めます。
この図で「件数が多い」ことは分かりますが、なぜその要因が起きたかまでは分かりません。原因調査には特性要因図などを組み合わせます。
本ラボは架空データを使う教育用モデルです。実際の対策の優先度は、障害の件数に加え、影響度・コスト・重大性を考慮してください。
6. 「80対20の法則」は絶対ではない
パレート図に関連して「少数の要因が結果の大部分を生む」という80対20の法則が知られています。ただし、必ず上位20%の要因で80%の問題が発生するという数学的なルールではありません。実データの偏りを確認するために使う考え方です。
たとえば業務システムの改善なら、発生頻度に加えて事故の深刻さ、影響人数、対策コスト、復旧時間も見て優先順位を決めます。回数は少なくても個人情報の漏えいに直結する問題は、上位の件数に入っていなくても重要です。
7. まとめ
パレート図は「何が多いか」を見つける図です。 大きい順の棒と累積割合の線を使うことで、主要因が全体のどれくらいを占めているかを把握できます。そこから「なぜ多いのか」を調べるには、特性要因図など他の手法を組み合わせてください。
参考:American Society for Quality(ASQ)「Pareto Chart」。本文中の数値は説明用の架空データです。