株式会社ジオデータ開発 ロゴ
株式会社ジオデータ開発GEO DATA DEVELOPMENT Inc.

NETWORK BASICS

マルチキャストとは?ユニキャスト・ブロードキャストとの違いをRIPの例で理解する

ネットワークで「1台に送る」「全員に送る」「参加者だけに送る」は、見た目は似ていても意味が大きく違います。この記事では、動画配信やWi‑Fiの身近な例から、ユニキャスト・ブロードキャスト・マルチキャスト・エニーキャストの違いを図で整理し、RIP がどのようにブロードキャストやマルチキャストを使うのかまでつなげて説明します。

最初にひとこと

マルチキャストは、「全員にばらまく」のではなく、「参加したい相手だけにまとめて送る」ための仕組みです。

そのため、ライブ配信、テレビ配信、ルーティング制御メッセージなど、同じ情報を複数台へ届けたい場面で役立ちます。

1. まずは4つの送り方をまとめて見る

ネットワークでデータを届ける方法は1つではありません。たとえば「社内の1台のPCへ送る」のか、「同じLAN全体へ知らせる」のか、「動画を見たい人だけに届ける」のかで、使う方式が変わります。

ユニキャスト

1台 → 1台

1人ずつに個別配送。Web閲覧や通常のアプリ通信の基本。

ブロードキャスト

1台 → 同じLAN全員

近所に一斉放送。DHCPやARPなど、同一ネットワーク内でよく出る。

マルチキャスト

1台 → 参加者だけ

見たい人だけが受け取る同報配信。動画配信やルーティング制御でも使う。

エニーキャスト

1台 → 最寄りの1台

同じ住所を複数拠点が共有し、いちばん近いサーバが応答する。DNSで有名。

2. ユニキャストは、いちばん普通の通信

ユニキャストは 1対1 の通信です。Webサイトを見る、メールサーバへ接続する、チャットアプリでサーバと通信する、といった普段のインターネット利用の多くはユニキャストです。

たとえば、あなたのスマホがショッピングサイトを開くときは、スマホからそのサイトのサーバへ個別に通信します。相手がはっきり1台に決まっているので、仕組みとしては分かりやすいです。

3. ブロードキャストは「同じLAN全体への一斉連絡」

ブロードキャストは、同じネットワーク内の全員へ一斉に送る方式です。学校の教室で「みなさん聞いてください」と一斉放送するイメージに近いです。

身近な例

ただし、全員に届けるということは、関係ない端末にも通知が届くということです。LANが大きいと無駄も増えるため、必要な場面以外では多用したくありません。

ブロードキャストの重要な注意

ブロードキャストは通常、ルータを越えて遠くのネットワークまでそのまま広がるものではありません。基本的には、同じLANの中で使う一斉連絡だと考えると理解しやすいです。

4. マルチキャストは「受け取りたい人だけへの同報配信」

マルチキャストは、特定のグループに参加している端末だけに送る方式です。ブロードキャストのように全員へばらまかず、ユニキャストのように1人ずつ別送もしません。

たとえば社内ライブ配信を20人が視聴している場合、20人分の別々の配信を作るよりも、マルチキャストグループに1回送って、必要な場所でだけ複製した方が効率的です。

同じ動画を10人に送るとき

ユニキャスト
配信サーバから 10 本の別々の通信を作る。受信者ごとに個別配送するので、分かりやすいが送信量は増えやすい。
配信サーバ → A / B / C / ... / J
マルチキャスト
配信サーバは基本的に 1 つの送信を行い、受け取りたい人だけがグループへ参加する。ネットワーク機器が必要な分だけ複製する。
配信サーバ → マルチキャストグループ 239.x.x.x → 参加者だけ

イメージ図

配信サーバ
↓
ユニキャスト
Aへ1本、Bへ1本、Cへ1本…と個別に10本送る
マルチキャスト
グループ宛てに1本送り、途中の機器が参加者のいる方向へだけ複製する
端末1
端末2
端末3
端末4
端末5
端末6
端末7
端末8
端末9
端末10

緑はグループに参加している端末。灰色は同じネットワーク上にいても受け取らない端末。

マルチキャストの身近な例

5. エニーキャストは「同じ住所を複数人で共有」

エニーキャストは少し別物で、同じIPアドレスを複数の拠点が共有し、その中で最も近い1台が応答する方式です。利用者から見ると相手は1つのアドレスですが、実際には複数拠点が待ち受けています。

身近な例では、公開DNSサービスやCDNの一部で使われます。東京からアクセスした人は東京に近いサーバへ、大阪からの人は大阪に近いサーバへ届く、といった動きができます。

6. RIP も説明:ブロードキャストとマルチキャストの違いがよく分かる例

RIP は、ルータどうしが経路情報を交換するための古典的なルーティングプロトコルです。ここで、ブロードキャストとマルチキャストの違いがはっきり見えます。

種類送り先特徴ポイント
RIPv1ブロードキャスト同じLAN上の全機器に経路更新が届く経路情報にサブネットマスクを含めない古い方式
RIPv2マルチキャスト(224.0.0.9)RIPを使う機器だけが受け取るVLSM/CIDRに対応し、より実用的

つまり、RIPv1 は「近所の全員に大声で伝える」方法、RIPv2 は「RIPに参加している人のグループだけに知らせる」方法だと考えると分かりやすいです。

なぜ RIPv2 の方がすっきりしているのか

ブロードキャストだと、RIP を使っていない PC やプリンタにまで経路更新が届きます。マルチキャストなら、RIP に参加しているルータだけに届けられるため、無駄が少なくなります。

7. 「その他のブロード」も整理:ブロードキャストと似て見えるもの

「ブロードキャストっぽい」と感じやすい通信はいくつかありますが、実際には意味が違います。ここを分けて考えると混乱しにくくなります。

用語誰に届く?身近な例ひとことで
ユニキャスト特定の1台Webサイト閲覧1対1
ブロードキャスト同じLANの全員ARP, DHCP初期探索一斉放送
マルチキャスト参加者だけRIPv2, IPTV会員向け配信
エニーキャスト最寄りの1台公開DNSいちばん近い窓口

8. マルチキャストを使うときの注意点

つまり、マルチキャストは便利ですが、どこでも自動的に使える万能技術ではありません。社内配信やネットワーク制御のように、利用場面がはっきりしているときに特に効果を発揮します。

9. 図で体験するラボ

次のラボでは、同じデータを何人に届けるか、どの方式を使うかを切り替えながら、送信本数や受信者の違いを視覚的に確認できます。RIP の v1/v2 の違いも見られます。

INTERACTIVE LAB

送り方の違いを図で比べる

利用場面と方式を切り替えて、どの端末に届くのか、送信本数はどれくらいか、図で見比べてみましょう。

1. 利用場面

社内ライブ配信の例です。同じ動画を複数人に届けるとき、ユニキャストだと人数分だけ別送し、マルチキャストだとグループ参加者向けにまとめて送れます。

2. 方式

3. 規模を調整

4. 結果

  • 選択方式:マルチキャスト
  • 送信本数の目安:1
  • 受信する端末数:6
  • おすすめ方式:マルチキャスト

グループ参加者だけが受け取ります。ネットワーク機器が必要な場所で複製します。

この場面に合った方式を選べています。

5. どの端末に届く?

送信元
↓
端末 1
グループ参加
受信する
端末 2
グループ参加
受信する
端末 3
グループ参加
受信する
端末 4
グループ参加
受信する
端末 5
グループ参加
受信する
端末 6
グループ参加
受信する
端末 7
未参加
受信しない
端末 8
未参加
受信しない
端末 9
未参加
受信しない
端末 10
未参加
受信しない

注:このラボは、ネットワークの送り方の違いをイメージでつかむための学習用モデルです。実際のIGMP、PIM、RIP更新タイマー、経路制御の詳細実装は簡略化しています。

10. まとめ

参考:RFC 2453(RIP Version 2)、RFC 1112(IP Multicast)、RFC 6890(Special-Use IPv4 Addresses)。この記事の図とラボは学習用の概念モデルであり、実際の経路制御やパケット処理を完全に再現するものではありません。