BACKUP & RESTORE
フル・差分・増分バックアップの違いとは?保存と復元の仕組みを図解
スマホの写真が消えた、仕事の資料を上書きしてしまった、会社のサーバが故障した。そんなときに必要なのが「バックアップ」です。でも、保存したファイルがあっても、どの順番で戻せば最新に近い状態に復元できるのかが分からなければ困ります。
フル=全部保存。差分=最後のフル以降の変更を毎回まとめて保存。増分=直前のバックアップ以降の変更だけ保存。この違いによって、保存量だけでなく復元の手順が変わります。
1. 「バックアップする」とは、どんな場面か
例えば家族旅行の写真が入ったフォルダを想像してください。日曜日には写真A・B・Cがあり、月曜日に写真Dを追加、火曜日に写真Eを追加、水曜日に写真Fを追加したとします。毎晩すべてをコピーするのは確実ですが、写真が何万枚もあると時間と保存容量がかかります。そこで変更分だけを保存する方式が使われます。
| 曜日 | 元フォルダの状態 | 追加した写真 |
|---|---|---|
| 日曜日 | A・B・C | 基準となる3枚 |
| 月曜日 | A・B・C・D | D |
| 火曜日 | A・B・C・D・E | E |
| 水曜日 | A・B・C・D・E・F | F |
2. 3方式の「何を保存するか」を図で比較
フルバックアップ 毎回、全部
日曜日
ABC
月曜日
ABCD
火曜日
ABCDE
水曜日
ABCDEF
各マスが、その日に保存する内容。A〜Fは例示用の写真ファイルです。
差分バックアップ 最後のフルを基準に累積
日曜日
ABC
月曜日
D
火曜日
DE
水曜日
DEF
各マスが、その日に保存する内容。A〜Fは例示用の写真ファイルです。
増分バックアップ 直前のバックアップからの変更
日曜日
ABC
月曜日
D
火曜日
E
水曜日
F
各マスが、その日に保存する内容。A〜Fは例示用の写真ファイルです。
差分と増分は、月曜日の保存内容が同じでも火曜日から違ってきます。差分はDとEをまとめて保存し、増分はEだけを保存します。ここが最も重要な違いです。
3. 壊れたら、どの順番で復元するのか
水曜夜のバックアップを取った直後にPCが壊れ、写真A〜Fを戻したい場面を考えます。
フル:水曜分だけ
水曜のフル(ABCDEF)を復元。1セットで完結します。
差分:日曜+水曜
日曜のフル(ABC)を戻してから、水曜の差分(DEF)を反映します。月曜・火曜の差分は不要です。
増分:日→月→火→水
日曜のフル(ABC)を戻し、月曜D、火曜E、水曜Fを順に反映します。
復元の経路(学習用)
フル
差分
増分
一般に、バックアップ取得の手間は「フルが多い、増分が少ない」傾向があり、復旧に必要な世代数は「フルが少ない、増分が多い」傾向があります。ただし実際の時間はデータ量・変更量・製品・ストレージ性能などに依存します。
4. 会社のサーバではどう使われる?
顧客情報を扱うネットショップを考えます。日曜深夜にフルバックアップを取得し、月曜〜土曜は毎晩差分を取得する設計なら、金曜朝に障害が起きたときは「日曜のフル → 木曜夜の差分」を復元するイメージです。木曜夜以降の注文はこのバックアップだけでは戻りません。
同じ条件で増分方式なら、「日曜フル → 月曜増分 → 火曜増分 → 水曜増分 → 木曜増分」が必要です。途中の増分が欠けると、それ以降の復元に支障が出ます。差分も最新の差分が壊れていれば、利用可能な古い差分時点までしか戻せないことがあります。
RPO:どこまでのデータ損失を許容する?
1日1回の夜間バックアップなら、障害時刻によって最大で約1日分の更新を失う可能性があります。
RTO:いつまでに復旧したい?
翌朝の営業開始までに復旧したいなら、復元量や手順を考えて方式を決める必要があります。
なお、バックアップから復旧する方式と、データベースのトランザクションログ・レプリケーションなどで短いRPOを目指す方式は、目的と仕組みが異なります。現場では組み合わせて使うこともあります。
5. 操作ラボ:変更量と復元手順を自分で確かめる
日曜のフルバックアップから、水曜までの変更ファイルを選ぶと、フル・差分・増分それぞれが「何を保存するか」「どの世代が復元に必要か」を動的に比較できます。
INTERACTIVE LAB
どれを保存し、どれを戻す?
学習用の簡易モデルです。日曜の「写真A・B・C」を基準に、月〜水曜に追加する写真を編集して比較します。
バックアップ方式
日曜
フル
月曜
差分
火曜
差分
水曜
差分
4日間で保存するファイル数の延べ合計:9 件(容量・実行時間ではありません)
復元シミュレーション
必要な世代:日曜 → 水曜
復元後の写真:写真A・写真B・写真C・写真D・写真E・写真F
実際のファイルやバックアップにはアクセスしません。
6. 運用で注意したいこと
バックアップと同期は違う
同期先で削除や暗号化が連鎖する場合があります。履歴や隔離されたコピーを保持する設計が重要です。
3-2-1の考え方
複数のコピーを異なる媒体や場所に分散させます。ランサムウェア対策ではオフライン・イミュータブルなコピーも有効です。
バックアップ成功 ≠ 復旧成功
保存ジョブが成功しても、実際に戻せるとは限りません。定期的な復旧テストが必要です。
世代・保存期間を設計する
昨日だけでなく、数日前に壊れたファイルを戻す必要もあります。世代数・保持期間・暗号化・アクセス権を決めます。
バックアップは「たくさん取ること」が目的ではありません。いつの状態へ、どれだけ早く、安全に戻せるかを決めてから方式を選ぶことが大切です。
図はファイル単位の単純化した例です。実際の製品ではブロック単位の変更追跡、合成フル、永久増分、スナップショット等が使われ、復旧手順や所要時間が異なる場合があります。