確率を「結果から」考える
ベイズの定理とは?
赤い玉から袋を推理する
「赤い玉が出やすい袋はどっち?」は簡単。でも、「赤い玉が出た。どちらの袋から出た可能性が高い?」と聞かれたら? その推理に使うのがベイズの定理です。
先に結論:結果から原因を推理する
ふつうの方向:原因 → 結果
袋1を選んだら、赤玉が出る確率は?
3/8 = 37.5%
ベイズで考える方向:結果 → 原因
赤玉が出たなら、袋1だった確率は?
15/47 ≒ 31.9%
袋が2つある。赤玉を引いたら、どっちの袋?
袋は目をつぶって半々の確率で選ぶものとします。それぞれから玉を1個引いたところ、色は「赤」でした。
袋1 (8個入り)
白5個・赤3個 → 赤が出る確率 3/8
袋2 (10個入り)
白2個・赤8個 → 赤が出る確率 8/10
赤玉が出やすいのは袋2です。ただし、袋が選ばれる確率も考える必要があります。今回だけは半々なので、次のように「袋を選んで赤が出る確率」を計算できます。
袋1を選び、赤玉が出る
1/2 × 3/8 = 3/16
18.75%
袋2を選び、赤玉が出る
1/2 × 8/10 = 4/10
40%
赤が出たケースだけを集めると、どちらの袋に由来する?
袋1由来の赤玉ケース ÷ 赤玉ケース全体 = (3/16) ÷ (3/16 + 4/10) = 15/47 ≒ 31.9%
ここが核心です。赤い玉が出たケースだけに絞って、その中で袋1が占める割合を求めています。
公式は「今見えている結果」に絞る計算
P(A | B) = P(B | A) × P(A) / P(B)
「Bが観測されたとき、Aである確率」
| 記号 | 名前 | 袋の例 |
|---|---|---|
| P(A) | 事前確率 | 赤玉を見る前に袋1が選ばれる確率 = 1/2 |
| P(B | A) | 尤度(ゆうど) | 袋1が選ばれたとき赤玉が出る確率 = 3/8 |
| P(B) | 周辺確率/周辺尤度 | どちらの袋からでも赤玉が出る全体の確率 = 47/80 |
| P(A | B) | 事後確率 | 赤玉を見た後、袋1が選ばれた確率 = 15/47 |
1000回の実験で考えると、さらにわかる
同じルールで「袋を選ぶ → 玉を1個取る」を大量に繰り返すとします。仮に800回なら、袋1を400回、袋2を400回選ぶ計算です(期待値としての説明)。
袋1の赤玉
400 × 3/8 = 150回
袋2の赤玉
400 × 8/10 = 320回
赤玉は合計470回。そのうち袋1由来は150回なので、150 / 470 = 15/47 です。式が苦手なら、まずこの「赤玉だけを集めて数える」方法で考えると直感的です。
身近な応用:迷惑メール判定
あなたの受信箱で、100通のうち10通が迷惑メールだとします。「当選しました」という語を含む割合が、迷惑メールでは80%、通常メールでは5%だった場合を考えます。
迷惑メール10通
語を含むのは約 8通
通常メール90通
語を含むのは約 4.5通(期待値)
この語が入っていたという情報を見た後に迷惑メールである確率は、8 ÷ (8 + 4.5) = 64% です。語が入っているからといって100%迷惑メールとは断定できません。実際の迷惑メール対策では、多くの特徴を組み合わせます。
数字を動かして、確率の変化を体験する
袋の選ばれやすさや赤玉の割合を変えてみてください。「袋2は赤が出やすい」だけでは、結果の推定が決まらないことがわかります。
赤玉・白玉から袋を当てるラボ
選ばれやすさと袋の中身を変えると、観測後の推定が変わります。
① 観測前の条件
袋2が選ばれる確率は 50% です。
② 観測した玉の色
観測色を変えると、尤度(その色の出やすさ)も変化します。
袋1を選び、この色が出る:18.8%
袋2を選び、この色が出る:40.0%
この色が出る確率(合計):58.8%
③ 結果から袋を推定(事後確率)
袋1だった確率
31.9%
袋2だった確率
68.1%
※ 計算は指定された理論上の確率を用いるもので、実際の玉をランダム抽選するものではありません。スライダーは5%刻みですが、元の例のみ37.5%を再現します。
混同しやすい3つのポイント
1. 『赤玉が出る確率』と『赤玉から袋を推定する確率』は別
P(赤 | 袋1) と P(袋1 | 赤) は異なります。条件の左右を入れ替えるだけでは計算できません。
2. 事前確率を無視しない
たとえ袋1の赤玉比率が高くても、袋1自体がめったに選ばれないなら、赤玉の大多数が袋2由来になることもあります。
3. 『結果→原因』は万能な因果関係の証明ではない
ベイズの定理は仮説と観測についての確率を更新します。観測の偏りや不適切な仮定があれば、計算だけ正しくても結論を誤ります。
まとめ
ベイズの定理は「結果がわかった後、原因に関する見込みをどのように更新するか」を計算するもの。赤玉から袋を推理する例で「赤玉が出たケースだけを集めて、その内訳を見る」と理解すれば、公式の意味も自然につながります。